笛吹川の徒鵜飼い

こんにちは。

令和5年7月29日、笛吹川の徒鵜飼い（かちうかい）を見物してきました。

徒鵜飼いの徒（かち）とは、鵜船に乗らず、徒歩で川の瀬を進みながら鵜飼い漁を行なうことですが、筆者は鵜船に鵜匠が乗り込んで複数の鵜をあやつる長良川のようなスタイルの鵜飼いも、今まで一度も見たことはありませんでした。

初めはそれほど強い期待があったわけではないのですが、いやいやどうしてどうして、鵜と鵜匠が見せてくれるこの伝統漁法には、とても味わい深いものがありました。

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夜八時、笛吹川市役所前の会場の徒鵜飼い
徒鵜飼い団の構成
今回の旅行メモ

夜八時、笛吹川市役所前の会場の徒鵜飼い

案内の通りに、会場である笛吹市役所前を目指します。鵜飼いの開始は夜8時からとあり、鵜飼いは市役所前の笛吹川となっております。

慣れないレンタカーのせいもあって、到着は夜8時を過ぎてしまいましたが、何の問題もございません。駐車場に割り当てられた市役所周辺は、煌々と明かりが照らされていて他県からの観光客も、迷うことが無いように工夫されております。

おまけに料金は一切が無料。会場も駐車場も完全な無料であり、セコい会場整理費とかを要求する姿勢は皆無であり、この自治体の度量の深さを感じずにはいられません。

車をとめて早速目の前の笛吹川の川岸の会場に向かいます。

市役所駐車場から川岸に渡るまでには、車道が一本あるのですが、ここにも交通提灯を掲げたオジサンたちが、圧倒的な歩行者優先で渡らせてくれるのでした。

すぐに徒鵜飼いの会場が見えてまいります。笛吹川川岸のコンクリの土手には、観客で立錐の余地なし。笛吹川の瀬が舞台のように明るく輝いております。

徒鵜飼い団の構成

写真のように、明るく照らし出された笛吹川の瀬は、川底の色様々な小石までがはっきりと見えるのです。

この川の上流にさかのぼる形（つまり舞台上手から下手に向かって）で徒鵜飼の人たちが足を踏ん張りながら進んでいきます。このユニットは最低でも、篝火の係りの人と、鵜を操る人の構成となっております。どちらも必須の要員でございます。

鵜匠の皆さまは、あの木綿の薄紺の烏帽子と漁服と腰蓑の三点セットで決めております。

場内アナウンス（今回のネタは皆これですが）によれば、徒鵜飼の場合、腰蓑は鵜舟の鵜飼の場合より若干短いのだそうです。これが鵜匠自らが流れに入るため流れに流されるようにとの対策であるからではないかと、勝手に拝察いたします。

鵜匠の皆さんは若い人ばかりです。場内アナウンスによれば、皆さん保存会の若い人たちだそうです。女性も多いようにお見受けいたしました。皆さん昼間の仕事を終えてから、この鵜飼に参集するそうです。普段から鵜場の掃除とかいろいろご苦労様です。

さて、鵜飼ユニットの行進を眺めておりますと、例の鵜達は首をヒモで縛られたまま、自主的に水中にドンドコ潜って鮎を捕まえに進んで行きます。上から見ておりますと、カエルか何かが水中に潜っているようにも見えます。

すると、早くも鮎が取れたのです。観客から歓声が上がります。

まさか観光鵜飼なので、鮎なんかは取れまいと踏んでいた私は正直びっくりいたしました。

すると、あっちのグループこっちのグループとドンドコドンドコと鮎が取れるのでございます。この笛吹川には本当に鮎が多いのですね。私も思わず拍手いたしました。

さて、魚を捕まえた鵜は、例の通り、鵜匠の紐によって手繰り寄せられて、これを吐き出すことになります。

これからが鵜匠の腕の見せ所。鵜匠は鵜を抱き上げてしっかりと抱え込み、鵜の鋭いくちばしと、同じく鋭い足の爪を避けながら無理矢理ではなく、とても自然に鵜から鮎を取り返し、腰のビクに放り込みます。

誠に見事な伝統漁法です。

再び場内アナウンスのお姉さんが子供の質問に答えます。この漁で捕った鮎は結局どうなるのと言う質問です。

ご安心ください。今日捕った鮎は後で皆、今日活躍した鵜たちに分けて食べさせるのだそうです。

場内アナウンス嬢が続けます。この鵜飼で活躍する鵜は全て海鵜でなくてはならず、この全国11カ所の鵜飼場に供給する海鵜を供給するのは、唯一茨城県の「鵜の岬」の海鵜であるということでございます。

茨城在住の私は、それを聞いて、誇らしさに、思わず涙いたしました。その日立伊師浜のウミウ捕獲場を私は実際に訪れており、崖の中に横穴を開けてすだれのような御簾のようなもので穴のこっち側をおおい、崖のテラスのうえに囮の鵜をおいて、近寄ってくる海鵜をどう捕まえるのか、その手法について、じっくり解説いたしたくも存じますが、紙数も尽きて参りましたので、このお話はまた、いずれそのうちとにといたします。